お客様の相談で、理屈では分かっていてもどうしようも動けない。そこで悩んでいる方のお話を聞くことが多々あります。

 お話を聞いているうちにそこにひとつのパターンが見えてきました。

それは生活の(主に経済的なもの)質と人生(主に感情や自分の本質)の質がままならない時です。

 今回のクライアント様もそういう印象を受けました。事業相談でもちろん利益を上げたいという名目で来所されたのですが、そこを解決に至る提案をしても、腑に落ちないようなのです。その背景にはそれを実行することで家族の関係が壊れるのではないか、また自分が大切にしてきた人間関係が崩れるのではないかという要因がありました。

 経済的利益の追求で相談に来られたのであれば、気にしないと一刀両断できるかもしれません。また若ければこれから何度でもやり直しも聞くので、一度リセットすることも出来るでしょう。でも、私のクライアントは私と同じような年代、すでに人生半世紀を過ぎ、そこまでに培った歴史があります。

そういう時は、FPの相談でありながら、もう一つの私の仕事であるキャリアカウンセリングの要素が強くなっていきます。

 確かに誰でも稼げば稼ぐ程いいという意見もありますが、この年齢になるとお金には代えられない価値観もたくさん携えながら生きているわけですから、そしてそれをいちからやり直すにはそう時間も残されていないのです。

 こういう時には経済的なものだけでなく、自分の大切にしているもの、これまでの背景をすべて聞いて優先順位をつけてもらいます。それを1年後5年後をみながらその優先順位を変えることもできると説明します。

 その大切にしたいものを守りながら、出来る経済的戦略を組み立てていきます。

 クライアント様が「一番大切にしていきたいもの。これを見つめ直すよいきっかけになった」と話してくださったときこの仕事を両輪に続けてきてよかったとこころから思うのです。